ツイッターでたまたま見つけた『ライフロングキンダーガーデン』という本。
子ども向けプログラミング言語『スクラッチ』を開発したMITの ミッチェル・レズニックという方の著書で、2018年4月に日本語版が発売されていた事を知り、
と直感し、さっそく購入し、目を通すことにしました。
ライフロングキンダーガーデン(生涯幼稚園)とは?
内容をざっくりまとめると、
社会の変化のスピードがどんどん早くなっているので、
教科書丸暗記型の教育ではなくて、
どんな変化にも対応できる柔軟で創造的な思考を持つようにしよう、
そのためのヒントが、昔の幼稚園にある。
ということかなと思います。
幼稚園スタイルの学びこそが、急速に変化する今日の社会で活躍していくために必要な想像力を、あらゆる年齢の人々が育むために必要なものであると確信しています。
参照:ライフロングキンダーガーデン P. 28
子ども向けプログラミング言語『スクラッチ』も幼稚園スタイルを参考に開発されていて、
「コーディングを学ぶ」ためではなく「学ぶためにコーディングする」という発想からきているそう。
幼稚園スタイルというのは、
例えば積み木やレゴブロックなどを使って、
遊びながら好きなものを自由に組み立て、つくりなおし、また組み立てるという過程を通して、
創造的に考えられるようにすることだそうで、
著者は『クリエイティブ・ラーニング・スパイラル』と名付けています。
クリエイティブ・ラーニング・スパイラル
『クリエイティブ・ラーニング・スパイラル』
直訳すると、『創造的な学びのらせん』になるかと思いますが、
下記5つの段階を繰り返すことで、創造的な思考力が育まれるとのこと。
- 発想・・ 幻想的なお城とその中に住む家族を発想
- 創作・・城や塔、物語を創作
- 遊び・・自分の作品をいじくり回す。塔を多角串たり新しい場面を追加したり。
- 共有・・あるグループはお城を建設して、別のグループはストーリー作成して共有・追加したり。
- 振り返り・・塔が倒れたりすると先生がやってきて、どうして倒れたのかを振り返る
- 発想・・今までの経験をもとにあらたな物語や建物をつくる
改めて思えば、
子ども向けプログラミング言語『スクラッチ』はこれらを全て兼ね備えているんだなぁと感心してしまいました。
教科書通りの勉強ももちろん大事ではあるのですが、
それらを使ってどう現実世界に役立てるかということになると、僕も含め苦手な方は多いと思います。
これだけ変化の激しい時代となると、教科書に書いてある通りではうまくいかないこともままあり、
月並みな言葉ですが、『しっかり考えて行動できるようになる』という事がますます重要になってくるんだろうなぁと思います。
そういえば、
個人的に始めてプログラムに挑戦した『エクセルVBA』では、
仕事でよく使ういくつかの資料を、ボタンを押すたびに最新版を取りにいって一箇所に集める
というような事をやったのですが、
その過程の中で『クリエイティブ・ラーニング・スパイラル』が回っていたような気もします。
- 発想・・ よく使う資料の最新版を一箇所に集めたい
- 創作・・エクセルVBAで頑張る
- 遊び・・正直遊び心の余裕はなかったかな・・どうやればうまくいくかというのはずっと考えてました
- 共有・・職場の先輩や同僚にお知らせする
- 振り返り・・職場の先輩や同僚から、この資料も欲しいとか、できればこうしてほしいという意見をいただく
- 発想・・意見をもとにエクセルVBAをパワーアップさせる
思い返せばぴったり一致します。
また、『ライフロングキンダーガーデン』では、『創造的思考力』を育てるための基本原則として、4つのPをあげています。
ライフロングキンダーガーデン 創造的思考力を育てるための4つのP
4つのPとは以下になります。
- Projects(プロジェクト)
- Passion(情熱)
- Peers(仲間)
- Play(遊び)
情熱、仲間、遊び(遊び心)というのはなんとなくわかるのですが、
盲点というか改めて考えさせられたのが、Projects(プロジェクト)の重要性でした。
具体的になんでもいいからモノを作るということがとても重要で、
MITが開発した『スクラッチ』しかり、
実際に何かしらものづくりをする過程において、
『クリエイティブ・ラーニング・スパイラル』を回し、どんどん改善していくことで、
『創造的思考力』が育まれるという内容でした。
思い返せば、
『エクセルVBA』で始めてプログラミングに取り組んだ時も、
よく使う資料の最新版を一箇所に集めたい
という要求に沿ってつくりだしたもので、
とてもシンプルな内容だったとはいえ、作り出すという経験の中で、
『クリエイティブ・ラーニング・スパイラル』が回り、
気づいたら『エクセルVBA』がそれなりに使いこなせるようになっていたのでした。
そこから他のプログラミング言語、例えば
- PHP (ピーエイチピー)
- JavaScript( ジャバスクリプト)
- Python(パイソン)
- C# ( シーシャープ)
なども使う様になったのですが、
元はと言えば『エクセルVBA』に取り組んで、壁にぶつかるたびに乗り越えた経験が活かされているのかなと思います。
また、『創造的思考力』を育むための学習者・親・教師へのヒントも掲載されていたので合わせてご紹介させていただきます。
ライフロングキンダーガーデン 学習者・親・教師のためのヒント
■学習者のための10のヒント
- シンプルに始める
- 好きなものに取り組む
- 何をすべきかわからないときはとにかくいじりまわす
- 実験することを恐れない
- 共に働き、アイデアを分かち合う友人を見つける
- (自分のアイデアを加えるために)他のものをコピーしてもOK
- アイデアをスケッチブックに残す
- 構築し、分解し、再構築する
- こだわりすぎるとうまくいかないかもしれない
- 自分自身の学びのヒントを作る
■親と教師のための10のヒント
- 発想:アイデアを喚起する例を見せる
- 発想:突き回すことを推奨する
- 創作:幅広い種類の材料を提供する
- 創作:あらゆる種類の作り方を受け入れる
- 遊び:作品そのものではなくプロセスを強調する
- 遊び:プロジェクトの時間はたっぷりと
- 共有:マッチメイカーの役割を果たす
- 共有:コラボレーターとして参加する
- 振り返り:(本気の)質問をする
- 振り返り:あなた自身の振り返りを共有する
個人的に、改めて認識させられたのが、
1. 発想:アイデアを喚起する例を見せる
という箇所で、
子ども向け無料プログラミング寺子屋『CoderDojo熊本』第1回目の反省点がまさにここでした。
簡単な操作方法だけ伝え、
と伝えたのですが、どうしても前提知識のある子とない子で差がでてしまい、思った様な結果に結びつかないということがありました。
最初は特に、「これを使ったらどんなことができるかというのをわかりやすく提示する事が重要だなと。
さいごに
『ライフロングキンダーガーデン』は事例たっぷりでまだまだ読めていないページもあるのですが、
個人的に取り組んでいる子ども向け無料プログラミング寺子屋『CoderDojo熊本』にも活用できそうなエッセンスがたっぷり盛り込まれていて、
もっと読み込んで子どもたちと楽しく成長できるような場をつくらなきゃなと改めて思えました。
同時に、仕事にしろ家庭にしろ、自分の子どもに対しても、
もっと遊び心を持って楽しくやっていった方がストレスも減っていくかもなぁと思ったり。
これからの時代をうまく生きるための一つの方法論として、『ライフロングキンダーガーデン』おすすめです。
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